Cazperのつれづれ日記: 新株予約権は有利な発行?

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2005年2月28日

panda01.gif 新株予約権は有利な発行?

最近ライブドアネタばかり書いていてチョット(T_T)な感じなのですが。磯崎哲也氏のブログに、今回の件は「有利発行ではない」という記事が載っていたので、ちょっと今回の件について一考したいと思います。(この主張は、法律的雑記録でもされています。)

まず、前提として、
■妥当な株価での新株発行であれば、株主総会を経ずに取締役会のみで決議できる。(参考)

■有利発行とは特定の株主に対して「有利」に安い価格で株式を発行することで、株主総会の特別決議がないと発行できないというものです。(商法280条の2第2項)

をふまえておきます。


●時価に近い新株発行が有利発行に当るのか(実際には予約権ですが)
予約権発行を発行した際の直前の株価は6,800 円です。これに対し払込金額が5950円であるというのが有利発行にあたるのかそうでないのか? というのが様々なサイトで焦点となっております。

この議論は、、磯崎氏47th氏のサイトに譲ります。

まとめると、時価に近い発行をするから有利発行ではないと考えるのが妥当なようです。

●既存株主の価値は毀損されていないか?
時価に近い発行をするから、有利発行ではないから問題無いと考えるのは早急な気もします。

PBRが1倍近いですので、新株を5950円だろうが時価で発行しようが、発行したことによるBPS(一株あたり純資産)への影響は少ないと思います。しかしながら、利益を生み出す事業へ資金を投下しない場合には、一株あたりの利益が落ちることを意味します。

つまり、増資資金による事業が利益に結びつけば既存株主も損失は被らないわけです。しかし、明確な利益を出せる事業展開を説明できない場合には、発行された株式数分だけ一株あたりの利益が希釈されますので、新株発行後の株価は低くなると考えられます。
(この部分は不公正発行の部分と関わってきます。ここらへんも磯崎さんのブログに譲ります)

というわけで、資金用途先をニュースリリースで見てみると・・・
(仮)臨海副都心スタジオプロジェクトへの整備資金に充当する予定」と書いてあります。

これって、ホリエモンの事業説明よりも分かりづらいですね~。


●新株発行ではなく新株予約権の発行なのか?
フジテレビの総資産は5743億です。一方、新株発行した場合に要する資金は3000億円と莫大となります。これは、即調達できるとは思えません。このための時間稼ぎのためにはニッポン放送に予約権を発行してもらった方がよいわけです。

なぜならば、新株発行であれば決まった期日(しかも早い時期)で購入せねばならないのに対し、「新株を買う権利」を購入すれば、6 月24 日まで購入するかしないかの決定を先延ばしできるわけです。

さらに、この予約権はニッポン放送の都合で償却が可能なわけです。つまり、ニッポン放送が、「やっぱりーー予約権の発行は無しにして~♪」と言えば、チャラにできるわけです。

一方で、この予約権が全部行使されることを考慮すると、上場廃止が見えてくるわけです。そうなると、"一般的"には、株が売れなくなるということで株価の下落を誘う形になります。

その他に、株価下落を誘う状況をフジテレビは作っており、「ライブドアが経営権を握ったらニッポン放送との取引を一切中止する」と言い切っているわけです。これも、ライブドアの株式取得に応じて株価下落を誘うわけです。

そこに、TOB価格5950円でフジテレビが網をかけてるわけです。フジテレビとしてはTOBを成功させた上で、予約権はやっぱりチャラだぁ~ という状態が非常にオイシイ状況なわけですね

そんなの見え透いてるわけですから、ライブドアとしては株を買い支えて株価をTOB価格よりも高い状態に維持させようとするのではないでしょうか?


こんな状況を面白がったら不謹慎ですが、裁判沙汰を除いたとして、皆が面白がる展開としては
●ライブドアが市場で株券を買い進んでいく。
●ニッポン放送の新株予約権をフジテレビが購入
●ライブドアが50%取得に王手する。
●ニッポン放送の新株予約権を行使する。(フジの資金調達法にも注目)
●"見かけ上"フジテレビの勝利
(仮)臨海副都心スタジオプロジェクト を本気でやるのか?

これはあくまでも私の予想ですが、もしフジテレビが全新株予約権を行使するところまで行き着くとしたならば、(仮)臨海副都心スタジオプロジェクトなんてやらずに、「株式交換」なり「持ち株会社を利用した株式取得スキーム」を利用してニッポン放送を完全子会社化して、ニッポン放送に投下した現金を回収するでしょうね。


はっきり言って、囚人のジレンマだと思いませんか?
どっちか手を引いたら、引いた方が負けです。両社が突き進んだら、両社痛み分けです。

補足データ:
ニッポン放送:株価収益率(連) 65.90倍 純資産倍率(連) 1.23倍
フジテレビ:株価収益率(連) 23.1倍 純資産倍率(連) 1.19倍
日本テレビ:株価収益率(連) 21.65倍 純資産倍率(連) 1.17倍
TBS:株価収益率(連) 86.61倍 純資産倍率(連) 1.04倍
テレビ朝日:株価収益率(連) 146.20倍 純資産倍率(連) 1.03倍
テレビ東京:株価収益率(連) 24.0倍  純資産倍率(連) 1.81倍

投稿者 cazper : 2005年2月28日 22:55 | b_entry.gif
     

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トラックバック時刻: 2005年5月15日 21:07

コメント

「参考1」でご紹介いただきましてありがとうございます。
ご紹介いただいているので、コメントのみにしておきますね。
私も有利発行では無理だと思います。
争点は、企業防衛としての資本獲得が不公正発行になるか否かがメインになると思います。
サブとして、相場操縦といえるか知りませんが、TOB中の大量の新株発行の是非でしょうか。
私は、この二点を総合すると、この問題に関してはライブドアが有利になるんじゃないかなと思ってます。

投稿者 Darth Alexios (翼あるもの@WebryBlog) : 2005年3月 1日 01:00

TBありがとうございます(^^)
ちょっと補足しますと、新株予約権の有利発行性はオプションとしての価額(この場合は336円)が、オプションの理論的価値として適正かどうかによって決まると考えられています。
で、このオプションの理論的価値というのは、(ご存知かもしれませんが、)いわゆるブラック=ショールズや多数項モデルで算定するのですが、そうしたモデルでは、行使価額と時価水準との関係はあくまで一つの要素に過ぎないので、私自身は、そこを重視しているわけではなかったりします(・・・ただ、何かTB頂いている記事を自分で読み直すと、そう思われても仕方なかったかな、という気もしますので、申し訳ありません
宜しければ、http://blog.drecom.jp/fallin_attorney/archive/98 のエントリーもご覧下さい。
では、これからもどうか宜しくお願いいたします。

投稿者 47th : 2005年3月 1日 02:17

 トラックバックしていただきありがとうございます。手元の資料を大学院に置き忘れていたため、やや細かい議論ができなかったのですが、最高裁のやや古い判例(第三小法廷判決昭和50年4月8日民集29巻4号350頁)が
 「普通株式を発行し、その株式が証券取引所に上場されている株式会社が、額面普通株式を株主以外の第三者に対していわゆる時価発行をして有利な資本調達を企図する場合に、その発行価額をいかに定めるべきかは、本来は、新株主に旧株主と同等の資本的寄与を求めるべきものであり、この見地からする発行価額は旧株の時価と等しくなければならないのであつて、このようにすれば旧株主の利益を害することはないが、新株を消化し資本調達の目的を達成することの見地からは、原則として発行価額を右より多少引き下げる必要があり、この要請を全く無視することもできない。そこで、この場合における公正発行価額は、発行価額決定前の当該会社の株式価格、右株価の騰落習性、売買出来高の実績、会社の資産状態、収益状態、配当状況、発行ずみ株式数、新たに発行される株式数、株式市況の動向、これらから予測される新株の消化可能性等の諸事情を総合し、旧株主の利益と会社が有利な資本調達を実現するという利益との調和の中に求められるべきものである。」
 として、その後の下級審においてもこのような事情が細かく勘案されているように見られます。(ちなみに、この事件は差し止めではなく、280条の11の差額の支払いに関する訴訟で、発行価格の決定前日の終値が365円で発行価格は320円で、不公正な発行価格ではないとされました。)最近差し止めが認容された、宮入バルブ事件(東京地裁平成16年6月1日)においても、この最高裁判決が引用された上で、日本証券業協会の自主ルール(最長6ヶ月遡れる)と比較して「比較しても約60パーセントに過ぎない。」とか、「株価の上昇が一時的な現象にとどまると認めることはできない。」といった事情を考慮されています。
 本件においては、資金調達というよりは見るからに企業防衛なので、事案としては微妙なところがある(しかも、最高裁との関係では、最高裁が差止めの事件ではない)ものの、このような事情が考慮されるのは間違いないと思います。そして、私個人としては今の値上がりは投機的なもので一時的なものに過ぎないと思われるし、多少継続性があるとしてもそこまで価格が乖離していないし、6ヶ月遡れば問題はないだろうし、という事情をいろいろ考えて有利発行とは言いにくいのだと思いました。
 あと、余談ですが、不公正発行についても社外取締役がニッポン放送に入るので、そこが機能しているといいにくくなるかも、となんとなく思っています。

投稿者 南屋断水 : 2005年3月 1日 12:44

TB ありがとうございました!

有利発行か否かの判断は、金融工学の世界に入っていってしまうので、私の手には負えませんが、多くのみなさんは、有利発行ではない、とされているようですね。

新株予約権は、フジの対抗策としては妙手だったかもしれませんが、一般株主完全無視の態度は、やはり批判されるべきです。
法律論的には、差止めが認められるべきと、考えています。

投稿者 Wolfgang_A : 2005年3月 1日 17:49

TBさせていただきました。
僕自身は新株予約権発行は差し止められるんじゃないかと思っているのですが、じゃあ、ホリエモンの勝負は本当に勝ち目があるの?ということも疑問です。

投稿者 go2c : 2005年3月 8日 00:13